〜 幼児期の終わりまでに育ってほしい姿 10項目(46細目)〜

 子どもの育ちを明確に小学校に伝え、小学校がそれを正しく理解するために、「幼児期の終わり
までに育ってほしい姿」(10の姿)という、具体的な子どもの姿が、保育園、幼稚園、認定こども園
の3つの幼児教育機関と小学校が共有していくことになりました。

 10の項目は、幼児期の後半までに「育つ姿」ではなく、「育ってほしい姿」です。つまりそれは、
5歳児後半に突然現れるものではなく、長い育ちの中でそういう方向に向かうことを期待している、
ということを意味しています。10の姿は到達目標でも幼児期の終わりの完成形でもありませんが、
毎日の生活の積み重ねがその姿につながっていくということは意識したいものです。

1 健康な心と体 
  保育所の生活の中で、充実感や満足感を持って自分のやりたいことに向かって心と体を十分に働かせながら取り組み、見通しを持って自ら健康で安全な生活を作り出していけるようになる。
(1) 安定感や解放感を持ちつつ、心と体を十分に働かせながら充実感や満足感を持って環境に関わり行動するようになる。
(2) 全身を使って活動することを繰り返す中で、体を動かす様々な活動に目標を持って立ち向かったり、困難につまずいても気持ちを切り替えて自分なりに乗り越えようとしたりして根気強くやり抜くことで活動意欲を満足させ、自ら体を動かすようになる。
(3) 適切な活動を選び、体を動かす気持ちよさや自ら体を動かそうとする意欲を持ち、いろいろな場面に応じて体の諸部位を十分に動かし進んで運動するようになる。
(4) 様々な機会を通して食べ物への興味や関心を持ち、皆で食べると美味しく、楽しいという経験を積み重ね、和やかな雰囲気の中で話し合ったり打ち解けたりして親しく進んで食べるようになる。
(5) 健康な生活に関わりの深い人々に接したり、社会の情報を取り入れたりなどして、自分の健康に対する関心を高め、体を大切にする活動を進んで行い、健康な生活リズムを身に付けるようになる。
(6) 遊びや生活を通して安全についての構えを身に付け、危険な場所、危険な遊び方、災害時などの緊急時の適切な行動の仕方が分かり、安全に気を配り状況に応じて安全な行動がとれるようになる。
(7) 衣服の着脱、食事、排泄などの生活に必要な活動の必要性が分かり、自分の力で行うために思い巡らしたり判断しようとしたり工夫したりなどして意欲や自信を持って自分でするようになる。
(8) 保育所における生活の仕方を身に付け、集団での生活や場の使い方などの状況を予測して準備し片付けたりなどして、自分たちの生活に必要な行動に見通しを持って自立的に取り組むようになる。


2 自立心
  身近な環境に主体的に関わりいろいろな活動や遊びを生み出す中で、自分の力で行うために思い巡らしなどして、自分でしなければならないことを自覚して行い、諦めずにやり遂げることで満足感や達成感を味わいながら、自信を持って行動するようになる。
(9) 保育者や友達と共に生活をつくり出す喜びを見出し、自分の力で行うために思い巡らしたりなどして自分でしなければならないことを自覚して行うようになる。
(10) 自己を発揮し活動を楽しむ中で保育者や友達に認められる体験を重ねることを通して、自分のことは自分で考えて行い、自分でできないことは実現できるように工夫したり、保育者や友達の助けを借りたりしてくじけずに自分でやり抜くようになる。
(11) 自分から環境に関わりいろいろな活動や遊びを生み出す中で、難しいことでも自分なりに考えたり工夫したりして、諦めず自分の力で解決しやり遂げ、満足感や達成感を味わい自らの生活を確立するようになる。
(12) 家族、友達、保育者、地域の人々などと親しみ合い、幼児なりに支え合う経験を積み重ね、自分の感情や意志を表現し共感しながら、自分のよさや特徴に気付き自信を持って行動するようになる。

 3 協同性
  友達との関わりを通して、互いの思いや考えなどを共有し、それらの実現に向けて、工夫したり、協力したりする充実感を味わいながらやり遂げるようになる
(13) 友達と積極的に関わり様々な出来事を共有しながら多様な感情の交流を通して、友達の異なる思いや考えなどに気付いたり、自己の存在感を感じたりしながら行動するようになる。
(14) 幼児同士の関わりが深まる中で互いの思いや考えに気付き、分かるように伝えたり、相手の気持ちを理解して自分の思いの表し方を考えたり、我慢したり、気持ちを切り替えたりなどしながら互いに関心を寄せ、分かり合えるようになる。
(15) 友達との関わりを通して互いの感じ方や考え方などに気付き、互いのよさが分かり、それに応じた関わりを通して、学級全体などで楽しみながら一緒に遊びを進めていくようになる。
(16) 人と共にいる喜びを感じ、学級皆で目的や願いを共有し志向する中で、話し合ったり、取りなしたり、皆の考え方をまとめたり、自分の役割を考えて行動したりするなどして折り合いを付け問題を解決し、実現に向け個々のよさを発揮し工夫したり、協力したりする楽しさや充実感を味わいながらやり遂げるようになる。

  4 道徳性・規範意識の芽生え
  してよいことや悪いことが分かり、相手の立場に立って行動するようになり、自分の気持ちを調整し、友達と折り合いを付けながら、決まりを守る必要性が分かり、決まりを作ったり守ったりするようになる。
(17) 他の幼児との葛藤などの様々な体験を重ね、してよいことや悪いことが分かり、自分で考えようとする気持ちを持ち、思い巡らしたりなどして自分の考えをより適切にしながら行動するようになる。
(18) 友達などの気持ちを理解したり、共感したり、相手の立場から自分の行動を振り返ったりして、思いやりを持って関わり相手の気持ちを大切に考えながら行動するようになる。
(19) 学級の皆と心地よく過ごしたり、より遊びを楽しくしたりするために決まりのあることが分かり、守ったり、必要に応じて作り替えたり、新たに作ったりして考え工夫し守るようになる。
(20) 皆で使う物が分かり愛着を持ち、自他の要求に折り合いを付け大事に扱うようになる。
(21) 自分の気持ちを調整しながら、友達と折り合いを付けたり、取りなしたり取り持ったりして周囲との関わりを深め、決まりを守るようになる。

  5 社会生活との関わり
  家族を大切にしようとする気持ちを持ちつつ、いろいろな人と関わりながら、自分が役に立つ喜びを感じ、地域に一層の親しみを持つようになる。遊びや生活に必要な情報を取り入れ、情報を伝え合ったり、活用したり、情報に基づき判断しようとしたりして、情報を取捨選択などして役立てながら活動するようになるとともに、公共の施設を大切に利用したりなどして、社会とのつながりの意識等が芽生えるようになる。
(22) 親や祖父母など家族から愛されていることに気付き、自分なりに思い巡らしたり表現したりして、家族を大切にしようとする気持ちを持つようになる。
(23) 小学生・中学生、高齢者や働く人々など自分の生活に関係の深い地域の人々との触れ合いの中で、自分から親しみの気持ちを持って接し、自分が役に立つ喜びを感じるようになる。
(24) 四季折々の地域の伝統的な行事などへの参加を通して、自分たちの住む地域のよさを感じ、地域が育んできた文化や生活などの豊かさに気付き、一層親しみを感じるようになる。
(25) 目的に必要な情報を得て友達同士で伝え合ったり、活用したり、情報に基づき判断しようとしたりするようになる。
(26) 公共施設を訪れ、それが皆の物であり自分に関係の深い場であることが分かり、大切に利用するようになる。
(27) 国旗が掲揚される様々な行事への参加や、運動会などの行事において自分で国旗を作ったりして日常生活の中で国旗に接し親しみを感じることにより、日本の国旗や国際理解への意識や思いが芽生えるようになる。

  6 思考力の芽生え
  身近な事象に積極的に関わり、物の性質や仕組み等を感じ取ったり気付いたりする中で、思い巡らし予想したり、工夫したりなど、多様な関わりを楽しむようになるとともに、友達などの様々な考えに触れる中で、自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい考えを生み出す喜びを味わいながら、自分の考えをよりよいものにするようになる。
 (28) 身近な環境に積極的に関わり、自分から気付いたり、発見を楽しんだり、考えたり、振り返ったり、それを別の場面で活用したりするようになる。

(29) 様々な環境に積極的に関わる中で、より深い興味を抱き、不思議に思ったことなどを探究するようになる。
(30) 遊びが深まる中で、多様な関わりを楽しみ、予想したり、確かめたり、振り返ったりして興味や関心を深めるようになる。
(31) 友達などの様々な考えに触れる中で、自己の思いや考えなどを自ら判断しようとしたり考え直したりなどして、新しい思いや考えを生み出す喜びを味わいながらよりよいものにするようになる。
(32) 物との多様な関わりの中で、物の性質や仕組みについて気付き、思い巡らし物を使いこなすようになる。
(33) 身近な物や用具などの特性や仕組みを生かしたり、いろいろな予想をしたりし、楽しみながら工夫して使うようになる。

 7 自然との関わり・生命尊重
  自然に触れて感動する体験を通して、自然の変化などを感じ取り、身近な事象への関心が高まりつつ、好奇心や探究心を持って思い巡らし言葉などで表しながら、自然への愛情や畏敬の念を持つようになる。身近な動植物を命あるものとして心を動かし、親しみを持って接し、いたわり大切にする気持ちを持つようになる。
(34) 自然に触れて感動する体験を通して、自然の大きさや不思議さなどを感じ、好奇心や探究心を持って、思い巡らし言葉などで表しながら、科学的な視点や、自然への愛情や畏敬の念などを持つようになる。
(35) 同じものでも季節により変化するものがあることが分かり、変化に応じて遊びや生活を変えるようになる。
(36) 自然現象を遊びに取り入れたり、自然の不思議さをいろいろな方法で確かめたりして、身近な事象への関心が高まるようになる。
(37) 共に遊んだり、世話をしたりなどする中で、生き物への愛着を感じ、生命の営みの不思議さや生命の尊さに気付き、生命の素晴らしさに感動して、身近な動植物を命あるものとしていたわり大切にする気持ちを持って関わるようになる。

8 数量や図形、標識や文字などへの関心・感覚 
  遊びや生活の中で、数量などに親しむ体験を重ねたり、標識や文字の役割に気付いたりして、必要感からこれらを活用することを通して、数量・図形、文字等への関心・感覚が一層高まるようになる。
(38) 遊びや生活の中で自分たちに関係の深い数量、長短、広さや速さ、図形の特徴などに親しむ体験を重ね、必要感から数えたり、比べたり、組み合わせたりすることを通して、数量・図形等への関心・感覚が高まるようになる。
(39) 遊びや生活の中で標識や文字が人と人をつなぐ役割を持つことに気付き、読んだり、書いたり、使ったりすることを通して、文字等への関心・感覚が高まるようになる。

  9 言葉による伝え合い
  言葉を通して保育者や友達と心を通わせ、絵本や物語などに親しみながら、豊かな言葉や表現を身に付けるとともに、思い巡らしたりしたことなどを言葉で表現することを通して、言葉による表現を楽しむようになる。
(40) 相手の話の内容を注意して聞いて分かったり、自分の思いや考えなどを伝える相手や状況に応じて分かるように話したり、話し合ったりするなどして、考えをまとめ深めるようになり、言葉を通して保育者や友達と心を通わせるようになる。
(41) イメージや思い巡らしたりしたことなどを言葉で表現することを通して、遊びや生活の中で文字などが果たす意味や役割、必要性が分かり、必要に応じて具体的な物と対応させて、文字を読んだり、書いたりするようになる。
(42) 絵本や物語などに親しみ、自分の未知の世界に出会うなどしながら興味を持って聞き、思い巡らすなどの楽しさに浸ることを通して、その言葉の持つ音の美しさや意味の面白さなどを友達と共有し、必要に応じて言葉による表現を楽しむようになる。
(43) 園生活を展開する中で、新たな環境との出会いを通して、幼児の持っている言葉が膨らんだり、未知の言葉と出会ったりする中で、新しい言葉や表現に関心が高まり、それらの獲得に楽しさを感じるようになる。

10 豊かな感性と表現 
  みずみずしい感性を基に、生活の中で心動かす出来事に触れ、感じたことや思い巡らしたことを自分で表現したり、友達同士で表現する過程を楽しんだりして、表現する喜びを味わい、意欲が高まるようになる。
(44) みずみずしい感性を基に、生活の中で美しいものや心を動かす出来事に触れ、思いを膨らませ、様々な表現を楽しみ、感じたり考えたりするようになる。
(45) 遊びや生活の中で感じたことや考えたことなどを音や動きなどで楽しんだり、思いのままにかいたり、つくったり、演じたりなどして表現するようになり、友達と一緒に工夫して創造的な活動を生み出していくようになる。
(46) 自分の素朴な表現が保育者や他の幼児に受け止められる経験を積み重ねながら、動きや言葉などで表現したり、演じて遊んだり、友達と一緒に表現する過程を楽しんだりして、表現する喜びを味わい、表現する意欲が高まるようになる。